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コラム

第十六回「カロッツェリアの新PRSスピーカー」

極!石田塾

2020.08.20

ようやく紹介できる日がやってきました。カロッツェリアの新しいPRSスピーカーです。実はこのスピーカーは5月に発表されたディスプレイオーディオなんかと同じ時期に発表される予定で、3月の頭には山形・天童に行って試聴していたんです。ところが新型コロナウイルスの影響でパーツが入手できないなどの不運が重なり、発売延期になっていたんですね。5月以降、なかなか発売時期の連絡がなかったから「もしかしてお蔵入り?」の不安もありました。CSTドライバーは、サイズが異なるものの以前1度開発段階でお蔵入りしていますからね。無事に日の目を見て、本当にほっとしています。

さて新PRSスピーカーですが、PRSという名前は付いているものの、以前のPRSシリーズとは成り立ちが違います。旧PRSはオープン&スムースという思想そのものは同じものの、どちらかというとオーソドックスなデザイン。2.8cm口径のソフトドームツィーターを使い、できるだけツィーターの低域側の再生能力を高めることで、オープン&スムースな音場感を生み出していたのですが、新PRSスピーカーはCSTドライバーによって音楽を描き出します。それは「超臨場」というキーワードで表現されています。

そのCSTドライバーとは元々パイオニアのプロフェッショナル向けオーディオ製品を作っていたTAD(テクニカル・オーディオ・デバイセズ)が開発した技術で、ミッドレンジのセンターキャップにあたる部分にツィーターを配置したデザイン。KEFにユニQというスピーカーがありますが、あれに似た構造ですね。

左 新PRS 右 TAD

このCSTドライバーが素晴らしいのは位相が一致していることです。CSTとはコヒーレント・ソース・トランスデューサーの略で、コヒーレントという単語がキーワード。位相や波面がきれいに揃ったものを意味しますが、コヒーレントという言葉を使ったところに、位相を重要視していることが感じられます。

それは「原音を忠実に再現する」というテーマを具現化するためです。原音再生に重要なのはトランジェント、ワイドレンジ、そして不要共振・固有振動の排除。入力信号に対して振動版が瞬時に反応し、各ユニットが広帯域にわたってフラットな再生能力を発揮する。そして入力信号以外の音を徹底的に排除すること。そのために最初に取り組まなければいけないのが位相を整えることなのです。

その点、CSTドライバーは2ウェイでありながら完全な点音源、つまりツィーターとミッドレンジで位相差が発生しません。またツィーターの指向性もミッドレンジの形状やクロスオーバーポイントの設定でコントロールしているため、リアルな音像と音場感を実現します。

この新しいPRSスピーカーはCSTドライバーに17cmウーファーを加えた3ウェイシステムのTS-Z900PRSとCSTドライバー単体の7.2cm2ウェイハイレンジ、TS-HX900PRSの2モデル。TS-Z900PRSは12万8000円(税別)、TS-HX900PRSは7万8000円(税別)という価格です。もう使っちゃった人も多いと思いますが、CSTドライバー単体なら、定額給付金でお釣りがくる金額ですね(笑)。

TS-Z900PRS
TS-HX900PRS

さて、前説が長くなりましたが、ここからが本題。3月に試聴した時の印象です。昼過ぎに東北パイオニアに到着し、説明もそこそこに早速試聴です。実は、最初は「なんかパッとしないなぁ…」という印象でした。帯域バランスがあまり良くなくて、ボーカルが少しこもり気味な印象だったんです。その理由は、どうやらマルチアンプ駆動するために、付属のクロスオーバーネットワークを使っていなかったころにあったよう。ちょっとハイ上がり気味で、それが影響してこもった感じに聞こえていたようなんです。

担当者も、出音のインパクトを高めるために、高域に少しアクセントを付けたかったんでしょうね。その気持ちもわかります。が、これでは正確な判断が難しいため、付属ネットワークを使った標準の接続につなぎ直してもらいました。

すると、なんということでしょう(ビフォア・アフター風w)。それまでの不満がさっぱり消えて、見晴らしの良い音が鳴っているではありませんか。まったく耳に引っかかるところがなく、音が素直に飛び込んできます。違和感無く素直に耳に入ってくるというのは良いオーディオ機器の証拠です。とにかく素直。オープン&スムースな音とはこれかっ! と感心してしまいます。

とくに音像の出方と音場のリアリティさには驚かされます。シンガーや演奏者がそこにいる感じで、空間に音を描いていくのです。前後の奥行き感もはっきりと感じ取れるのは、位相がぴったり合っている証拠でしょう。もちろん、原音再生には情報量やレスポンスの速さ、音色を変えない適度な内部損失などさまざまな要素が絡んできますが、そのあたりも十分。それにぴったり合った位相が加わって、素晴らしい音になっているのでしょう。

CSTドライバーは7.2cm口径なので、大きいツィーターくらいのサイズ感。個人的には、取り付けの難しさや調整の大変さなどを考えると「クルマにはフロント3ウェイは不要」と思っているのですが、TS-Z900PRSなら2ユニット構成の3ウェイシステムだから、ツィーターがでっかい2ウェイ・スピーカーのようなもの(笑)。TS-HX900PRSは再生周波数帯域が173Hz〜90kHzと広く、この帯域をダッシュボード上などの高い位置で再生できるのであれば、カーオーディオにおける高音質再生にとっても、ものすごく有利です。僕なら小細工せずにダッシュボード上にドーンと置くか、もしダッシュボード場にミッドレンジを埋め込むスペースがあるならそこに埋め込むかして取り付けると思います。

いずれにしても発売は9月の予定。楽しみに待ちましょう!

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